2005年04月30日

「伝道への情熱」の沼田恵範様

トロイア戦争は実際にあったことに違いない。トロイアの都は地中に埋もれているんだ!
-少年時代に抱いた夢と信念を実現するために シュリーマンはまず 財産作りに専念し ついで 驚異的な語学力によって十数カ国語を身につける。そして 当時、空想上の産物とされていた ホメーロスの事跡を次々と発掘してゆく。考古学史上、最も 劇的な成功を遂げた男の波瀾の生涯の記録-

--「古代への情熱」-シュリーマン自伝- 新潮文庫 裏表紙より--

商売をしていた頃、黒骨にとっての 憧れのヒーローは トロイア遺跡を発掘で有名な商売人 ハインリヒ=シュリーマンでした。幼い頃 抱いた夢を実現させるため 商売をし 成功し、なした財を長年の夢につぎこみ トロイアを発掘した生涯。
「かっこいいなあ・・」と思ったものです。

しばらくし 私は縁あって坊主になり、商売の世界から離れました。

シュリーマンさんのことなどすっかり忘れていた私ですが 程なくして驚きます。
それはシュリーマンさんに負けず 劣らない いかした仏教徒がいることを知ったからでした・・・

明治三十年、東広島市にある浄蓮寺という貧しい寺の三男坊として 沼田恵範 というひとりの男の子が生まれます。
両親から仏の教えを教えられ すくすくそだった 彼は 京都の西本願立 平安中学に進学します。
在学中の成績は優秀で 上級の学校に進学して 学びたいと思いつつ 「うちは貧乏だからなあ・・」悩んでいました。

そんなことを考え 卒業を控えたある日 西本願寺が海外に派遣する布教使(説教使)を養成するため 海外に派遣する留学生募集のお達しが学校にあり 彼は学校に推薦されたのでした。

しかし 留学といっても 補助してもらえるのは 船賃と生活費の三分の一という 無茶なものでしたが 
「アメリカに行って 英語を学び 立派な布教使になるんだ!」と もろともせず 日本を旅立つことを決意したのです。

留学
まず、一年半ほど ハワイで英会話を身につけた後 アメリカ カリフォルニア州にある ハリウッドハイスクールに入学しました。
渡米した彼は 学問を続けるために スクールボーイとして 他人の家に間借りし、朝になると 家の人達の朝御飯をつくり、夕方帰って 夕飯をつくり、掃除、洗濯 etc・・と休まず 働きながら勉強しました。

そんな無理がたたってか ある日のこと体を壊し 医者から <肺結核>という 当時ほぼ死の宣告に等しい診断結果を聞かされます。

帰国するお金はもちろん 治療する余裕もありません。相談する人もアメリカにはいませんでした。

<今まで苦労してきてのに・・・ 何の為に頑張ってきたというんだろう・・・>
と自身の不運を恨む日々が続きました。

<一体どうすれば・・・>
と少し落ち着いて考えていた その時 彼は思い出します。
故郷を発つ時、父からもらった 「名号」、母から貰った「数珠」と「経典」のことを・・
おもむろに 壁に 名号をかけ 数珠をしっかりと握り、読経をはじめます。

しばらく 読経を続けた後 彼はすっかり忘れていた大事なことを思い出すのです。
「私は一人ではなかった!いつも仏の慈悲の働きの中にいたんだ」

「人は心の動物」とは よくいったもので 心の支えを取り戻した 彼の病は 若さも手伝って うそ臭い程 回復に向かいます。

そんなこんなで 何とか恵範さんがハイスクールからカリフォルニア大学に進学した頃 彼の心の中に ある変化が起きます。

留学当初は「僧侶になって 世のため 人のために仏教を広めたい」と思っていたのですが いつしか 「仏教を広める人たちの手伝いをする <外護者>として 布教、伝道しよう」と思うようになったのです。
それは 当時のアメリカという土壌に生活してみて 実感されたことのようです。

とりあえず ものは試し 英文の仏教雑誌を発行し 大学や図書館に寄贈してみました。

やはり 上手く行きませんでした。
当時のアメリカは仏教に対する理解が乏しいかったので どうしても資金が集まり難かったのです。
恵範さんは思います。
「お金がなければ どんなに良いことも続けられない・・・ こうなったら 人に頼らず 自分のお金で仏教をひろめよう!」と
そして 大学を卒業し 29歳になった彼は 10年ぶりに日本に帰国するのです。

帰国
当時、日本は不況の時代でしたが 大学で習得した 経済統計学が役所の目にとまり 内閣資源局の統計官として 幸運にも採用されます。

とりあえず 仕事に就くことが出来たわけでしたが 帰国したのは
何か事業をして その利益で仏教を広めたい!>という目的がありました。

「何か事業をしなければ・・・」
事業などやったこともなく、資本もありません。一体何をどうすればいいのかわかりません。

<よくわかんないけど どうせなら 国内で誰もやっていない事業なら 怨まれなくてすむよね!>
ということで いろいろ調べた結果 マイクロメーターというものが 100%輸入ということが判明します。

*マイクロ-メーター [micrometer]
ねじの回転角とねじの移動距離との関係を利用して、二点間の距離を精密に測定する器具・装置。特に、針金の外径などを測定するための機器をさす。また、顕微鏡や望遠鏡にとりつけ、視野の中の目盛り線や標線をもとに、物体の位置や長さを精密に測定するのに用いられるものもある。測微尺(そくびしやく)。測微計。

「じゃあ これにしよう!」
と開発しようとされますが 世の中そんなに甘くはありません。
というのも 実は このマイクロメーターという製品 かつて日本政府が大金をはたいて 研究所に命じて作らせたことがあったのですが 結局 完成しなかったという いわく付きのシロモノだったのです。

案の定 開発は進まず やがて資金も底を尽き、自分の家も 抵当に入れましたが 完成のめどが立ちません。

<やはり 片手間はよくないよな・・>ということで ここにきて せっかくの役所仕事を退職し 事業一本に人生を賭ける決意をされるのです。
それからというもの 昼は資金調達に走り回り、夜は 研究室にカンヅメという 苦しい生活を続けられます。

日本に帰って10年が経つころ 39歳になった恵範さん ついに 国産第一号のマイクロメーターを完成させます。

一難さってまた一難

やっとこさで作り上げたマイクロメーターでしたが 無名のメーカーなので 営業にいっても 全く取り合ってもらえません。
<せっかっく いいものを作ったのに・・ 何で見てくれないんだ!>

またしても大きな壁に ぶち当たった恵範さんでしたが ここで彼は 意外な行動を思いつきます。

彼は 明治天皇の
「外国(とつくに)に 劣らぬ物を作るまで 工(たくみ)の技に励め諸人」という詩と共に
「外国製品に独占されたままの 今の日本の現状でいいのか! 私は外国に負けないマイクロメーターを作った! この製品を使ってどうか外国に負けない製品を作ってください!」
という内容の檄文を マイクロメーターを使っている日本の各企業に送りつけたのです。

この心粋が 企業のトップたちのハートに火を付けました。
「一度 見せに来い!」 「持って来い!」
という 問い合わせが殺到するのです。

この後 終戦、海外進出など いろいろと苦労されますが それらを乗り越え 沼田恵範さんの会社「ミツトヨ」は世界最大規模の「マイクロメーター」の会社に成長することになるのです。・・・・

意外なところで・・・
みなさんは旅行に出かけ ホテルに泊まった際、部屋の机の引出しの中にこんな本を見つけたことはありませんか?

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実はこれ 沼田恵範氏が創設した 財団法人「仏教伝道協会」(毎年、ミツトヨの売上高の1%が寄付されているそうです)が無料で配布しているもので 日本だけでなく 世界中の有名なホテルにも置いてあるんです

そうです彼は 財をなし ついに志をとげたのです!

本来 仏教団がすべきことを 一個人が成し遂げたんですよ!!
まさに 「日本のシュリーマン」といったところではないでしょうか?手が合わさります。

ですから おおきなお世話ですが
ホテルにお泊まりの際は  この方が成し遂げた偉業とその志を思い出しつつ 仏典に目を通して見てはどうでしょう。

*おまけ

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posted by 泣いた赤骨 at 18:39| Comment(6) | TrackBack(2) | 黒骨の仏教者レビュー | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
東京に行ってきました。1泊ですけどね。ビジネスホテルしか利用したことがないので、その本をまだ見たことないと思います。

これから気をつけてみたいと思います。
Posted by たかはし at 2005年05月01日 11:34
ボタンを設置できたんですね。
ここのプログって設定がイマイチ不明でした。
ちなみに私のプログは、なんだか不都合がありつながらないです。
休業期間かしら・・・・。
Posted by あまね at 2005年05月02日 10:31
たかはし様コメントありがとうございます。
ビジネスホテルでも置いてあるところがあります。
ビジネスホテルで見たことありますよ。

あまね様コメントありがとうございます。
ちなみに私のプログは、なんだか不都合がありつながらないです。
休業期間かしら・・・・>
うちのブログ(ocn)も最近 夜になると非常に重たくなり、時には 更新できなくなります。
ocnのhpみたら 原因を調査中ですみたいなことが書いてありました。
苦労して書いた記事が消えるのは泣けますねえ。
Posted by 黒骨 at 2005年05月04日 03:15
沼田恵範は私の祖父です。
なんとなく祖父の名前で検索してみようと思いたち
このブログを見つけました。コメントを投稿するのも初めてなので妙な気分ですね。何年も前に亡くなった祖父の顔を久しぶりに思い起こしました。
Posted by ちえ at 2005年10月17日 00:32
ちえさま はじめましてコメントありがとうございます。

あなたのおじい様は 日本の仏教徒の誇りです。
私も尊敬しています。
もっと多くの人に このような方がいらっしゃたことを知って欲しいと思っています。
Posted by 黒骨 at 2005年10月19日 02:17
沼田恵範師を検索してここにたどり着きました。
真念寺という寺の住職を務めております。
私の祖父と沼田師は在米中に親交があったということです。
一緒に写った100年前の写真と沼田師が病にかかった時のことがロサンゼルス西別院の寺報(2017年9・10月号)に掲載されました。
よろしければご一読を。
Posted by J Yutaka at 2017年09月22日 16:41
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